防音ガラスとは|種類・相場と設置前に理解しておきたいポイント
「騒音対策に防音ガラスを使用したい」「種類や注意点を教えてほしい」などと考えていませんか。頻繁に利用するものではないため、選び方がわからず困っている方もいるでしょう。
防音ガラスの効果は種類により異なるため、詳細を理解してから選択することが大切です。ここでは、防音ガラスの概要、種類、相場を紹介するとともに設置前に理解しておきたいポイントなどを解説しています。検討中の方は参考にしてください。
防音ガラスとは
防音ガラスとは、部屋から外へ、外から部屋に聞こえる音を軽減するガラスです。文字通り、音を防ぐガラスといえるでしょう。器を使用する部屋、大きな声を出す部屋などで使用されています。また、最近では、生活環境を整える目的で設置する方も増えています。
防音ガラスには、いくつかの選択肢があります。防音のメカニズムや防音(遮音)性能は、製品により異なります。どれでも同じというわけではないため注意が必要です。
また、窓の防音は、ガラス以外の要素からも影響を受けます。具体的には、サッシ(ガラスフレームと窓枠)も窓の防音に関わっているのです。
静かな部屋を実現したい場合は、これらにもこだわる必要があるといえるでしょう。
防音のメカニズム
前述の通り、防音のメカニズムは製品で異なります。一方で、基本的な防音のメカニズムは同じです。音のエネルギーは、物質に反射されたり吸収されたりして失われます。
これらの結果、残ったエネルギーが透過音として侵入するのです。物質を通過する際に失われる音を透過損失といます。この値(デシベル)が大きいほど、物質の防音性(遮音性)は高いと考えられます。
防音ガラスは、何かしらの方法で透過損失の値を大きくしたガラスです。ちなみに、1枚ガラスの防音性は、厚みを増すほど高くなります。
ただし、特定の周波数で防音効果は低下します(=コインシデンス効果)。したがって、単に厚みを増せばよいといえるわけではありません。
防音ガラスの種類
防音ガラスの主な種類は以下の通りです。
【種類】
- 合わせガラス
- 二重ガラス
- 複層ガラス
これらについて解説します。
合わせガラス
ガラスとガラスの間に、防音効果のあるフィルムを挟んで圧着した製品です。フィルムの働きで、音の振動を熱に置き換えます。これにより、コインシデンス効果を抑制できます。
コインシデンス効果は、特定の周波数で防音効果が低下する現象です。したがって、幅広い音域で高い防音性能を発揮します(その他の音域の防音性能が高まるわけではありません)。
安全性や防犯性が高い点も、合わせガラスの特徴です。ガラスとガラスの間に合成樹脂製のフィルムを挟んで圧着しているため、衝撃が加わったときにガラスが割れにくい(ものが貫通しにくい)、ガラスが割れたときに破片が飛散しにくいなどの特徴を備えます。
二重窓
既存の窓の内側(室内側)に別の窓を取り付けたものです。内窓と呼ばれることもあります。簡単に説明すると、窓を二重に取り付けた状態といえるでしょう。以上からわかる通り、防音ガラスそのものを指すわけではありません。
二重窓の特徴は、外側の窓と内側の窓の間に空気の層ができることです。この層が音の伝達を遮るため防音効果が高まります。コインシデンス効果は、外側の窓と内側の窓の厚みを変えると防げます。窓の気密性が高まるため、音漏れしにくくなる点も見逃せません。
また、二重窓には断熱効果も期待できます。外側の窓と内側の窓の間にできた空気の層が熱の伝達を防ぐためです。窓の数が増えるため、防犯性能も高まります。
複層ガラス
ガラスとガラスの間に空間を設けた製品です。この空間を中空層といいます。複層ガラスは、断熱を主な目的として開発されました。2枚のガラスを使用しているため、1枚のガラスより防音性は高くなると思われがちですが、必ずしもそうとはいいきれません。
空気の層がバネとして働き、特定の周波数で音が透過しやすくなる共鳴透過が起こるためです。共鳴透過は、内側と外側で窓の厚みを変えると和らげられます。また、中空層を真空にして、防音性能を高めている製品もあります。
必ずしも防音性能に優れているわけではないため、製品ごとの特徴を理解してから選択することが大切です。
防音ガラスに交換する際にかかる費用
窓ガラスの交換に、かかる費用の目安は以下の通りです。
種類 | 費用の目安 |
合わせガラス | 45,000~65,000円 |
二重窓(内窓) | 60,000~150,000円 |
複層ガラス | 55,000~80,000円 |
具体的な金額は、使用するガラス、ガラスのサイズ、取付場所、作業内容などで異なります。実際にかかる費用を把握したい場合は見積もりが必要です。ネットでガラスを購入して、DIYで交換することもできます。
この場合の金額も使用するガラス、ガラスのサイズなどで異なりますが、業者に依頼するよりも安価に抑えられます。例えば、合わせガラスであれば25,000円程度から交換できます。
金銭的な負担を抑えたい場合は、DIYも選択肢のひとつです。
防音ガラスに変更する前に知っておくべきこと
ここからは窓ガラスを変更する前に、押さえておきたいポイントを紹介します。
引き戸にも取り付けることができる
環境によっては、引き戸の窓を交換したいことがあるはずです。引き戸であっても、防音ガラスは問題なく取り付けられます。ただし、扉の上下に隙間ができやすい(気密性が低い扉が多い)ため、期待しているほどの効果を実感できないことがあります。
気密性が低いと、隙間から音が漏れてしまうためです。したがって、窓ガラスだけでなく、扉の交換も勧められることがあります。引き戸の窓を交換したい場合は、プロと相談しつつ対策を検討することが大切です。
サッシの交換が必要な場合もある
窓の防音性能は、窓ガラスだけで決まるわけではありません。サッシの気密性も窓の防音に深く関わっています。サッシに隙間があると、そこから音が伝わるためです。
防音性能の低いサッシに防音ガラスを取り付けても、ほとんど効果はないと考えられています。したがって、環境によっては、サッシの交換が必要になります。気密性が高いサッシを探している方は、樹脂サッシを候補に加えるとよいかもしれません。
ただし、サッシを交換すると割高になります。この点が気になる方は、二重窓の取り付けを検討するとよいでしょう。既存の窓をそのまま活用できるため、設置にかかる費用を抑えられます。
防火地域では、防音ガラスより二重窓のほうがよい
防火地域で、既存の窓を交換したい場合は注意が必要です。これらの地域では防火窓の設置を求められます。防火窓は、火災の拡大を抑える性能を備えた窓です。わかりやすい例として、網状のワイヤーを組み込んだ網入りガラスがあげられます。
以前に比べると窓の選択肢は増えていますが、それでも自由に選べるわけではありません。防火地域では、防音ガラスより二重窓がおすすめです。既存の窓を撤去しないため、細かなルールを気にせず取り付けられます。
ただし、具体的なルールは自治体などで異なることがあります。防火地域で窓を交換する場合は、事前に詳細を確かめておきましょう。
防音ガラスを検討する際によくある疑問
ここからは、防音ガラスに関するよくある質問に回答します。
防音フィルムとの違いは何か?
手軽な騒音対策を探している方の中には、防音フィルムの設置を検討している方がいるはずです。防音フィルムは、音を跳ね返したり吸収したりするフィルムといえるでしょう。
基本的な働きは防音ガラスと似ていますが、原則として質量が小さいため同じ効果を期待できるわけではありません。単位面積あたりの質量が大きいほど防音効果は高くなるためです(質量則)。
防音フィルムの中にも高い効果を期待できるものはありますが、これらの価格帯は防音ガラスと大きく変わりません。
賃貸住宅でも交換できるのか?
窓ガラスの交換は、原則として工事が必要です。賃貸住宅の場合、自分の意思だけで工事を行うことはできません。建物の所有者である貸主、または管理会社から許可をえなければならないためです。
勝手に工事をすると、原状回復費用を請求される恐れがあります。許可をえられない場合は、新しい穴を開けずに設置できる二重窓を設置するとよいかもしれません。
こちらであれば、部屋を傷つけず取付・取り外しを行えるため、賃貸住宅でも設置できる可能性があります。
防音ガラスに変えても思ったよりも効果が出ないのはなぜか?
窓の防音効果は、窓ガラスの性能だけで決まるわけではありません。サッシの性能も深く関わっています。例えば、サッシの気密性が低いと隙間から音が伝わるため、防音ガラスに変えても効果を実感できない恐れがあります。
騒音や音漏れが気になる場合は、サッシを含めた対策が必要です。一般的に、樹脂サッシは気密性が高いと考えられています。
防音ガラスで静かな環境を実現
本記事では、防音ガラスの種類や注意点について解説しました。防音ガラスを簡単に説明すると、音の出入りを遮るガラスといえるでしょう。特徴により、合わせガラス、二重窓、複層ガラスに分かれます。
それぞれの強み、弱みは異なるため、詳細を理解してから選択することが大切です。また、部屋の防音には、サッシも深く関わっています。サッシを含めた交換が、有効な対策になることもあります。
騒音や音漏れが気になる方は、この記事を参考に窓ガラスの交換を検討してみてはいかがでしょうか。
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