ペアガラスの防犯性能|防犯目的で使用するときに検討したい対策

「ペアガラス(複層ガラス)を防犯目的で使用したい」などと考えていませんか。 2枚のガラスを使用しているため、防犯性能が高いと思ってしまいますよね。
最初に結論を示すと、ペアガラスの防犯性能はあまり高くありません。 したがって、防犯目的で使用する場合は、別の対策が必要です。
ここでは、ペアガラスの概要、構造とペアガラスの防犯性能を高める方法などを解説しています。 以下の情報を参考にすれば、どのように対策を講じればよいかがわかるはずです。
ペアガラスについて理解を深めたい方は参考にしてくださいね。
ペアガラスとは
ペアガラスは、ガラスとガラスの間に一定の空間を設けた、複数枚のガラスで構成されるガラスです。 ガラスの枚数が2枚のものをペアガラス、3枚のものをトリプルガラスといいます。
ちなみに「ペアガラス®」はACG株式会社が登録している商標です。 広く流通しているため、現在では一般名詞として用いられていますよ。 ペアガラスと混同しややすいものとして二重窓があげられます。
二重窓は、窓の内側にもうひとつの窓を設置したものです。 この特徴から、内窓、二重サッシなどと呼ばれることもあります。 窓そのものを増やしている点が、ペアガラスと異なりますよね。
ペアガラスの構造
ペアガラスは、2枚のガラスとスペーサー、吸湿材で構成されます。 室外側から見た基本的な構造は以下の通りです。
【構造】 室外:ガラス+スペーサー・吸湿材+ガラス:室内
スペーサーはガラスとガラスの間に一定間隔の空間(中空層)を設けるアルミ製の部品、吸湿材はスペーサーがつくった空間を乾燥状態に保つ薬剤です。
簡単に説明すると、2枚のガラスでスペーサーと吸湿材を挟んでいる構造といえます。 ただし、具体的な構造は製品により異なります。 中空層に特殊なガスを封入しているものやガラスの内側に特殊なコーティングを施しているものなどがあります。
ペアガラスに防犯性能はない?
2枚のガラスで構成されるため、ペアガラスを防犯に使用したいと考えていませんか?
しかし、一般的なペアガラスに防犯性能は期待できません。 2枚のガラスに、板ガラス(フロートガラス)を使用しているためです。
ただし、製品を選べば防犯にも使用できますよ。 一般的な板ガラスではなく、合わせガラスを使用しているものがあります。
合わせガラスは、2枚のガラスで合成樹脂を挟み込み、割れにくくしたものです(詳しくは「ペアガラス以外のガラスの種類と防犯効果」で説明しています)。 防犯目的で導入する場合は製品を慎重に選ぶことが大切ですよ。
ペアガラス以外のガラスの種類と防犯効果
ガラスには、さまざまな種類があります。 ここでは、防犯目的で利用されることが多いガラスを紹介します。
強化フロートガラス
一般的な板ガラスを軟化点付近まで加熱してから急速に冷やして製造するガラスです。この工程で、ガラスの強度を3~5倍程度に高められます。 つまり、面に圧力が加わっても割れにくくなるのです。
ただし、一点に強い衝撃が加わると、簡単かつ粉々に割れてしまいます。 したがって、防犯目的での使用には向いていません。 強化フロートガラスの魅力は、面に加わる圧力に強くなることと一点が割れると全体が粒状に砕けることです。
粒状に砕けるため(鋭利な破片ができない)、割れても原則としてケガをしません。 この特徴から安全ガラスと呼ばれることもあります。 強化フロートガラスは防犯ではなく、安全性能が高いガラスです。
網入りガラス
金属製のワイヤーを、網状に挿入したガラスです。 一見すると防犯性能に優れていそうですが、網入りガラスを防犯目的で使用することはすすめられません。 網入りガラスは、主に防火用として利用されているガラスです。
ガラスにワイヤーが入っているため、高温で割れても周囲に破片が飛び散りません。 また、ワイヤーにガラスの破片が引っかかるため、割れた窓からの炎、火の粉の侵入などを防げる可能性があります。
これらの特性を備えるため、防火用として使用されているのです。 以上の特性は、防犯面でマイナスに働く恐れがあります。 泥棒が窓を割ったときに、破片が飛び散りにくいためです。
大きな音が出ないと、泥棒は快適に作業を進められます。 このことを知っている泥棒から狙われることも考えられます。 もちろん、リスクが極端に高くなるわけではありませんが、注意したいポイントといえますよね。
合わせガラス
中間膜を挟んで2枚のガラスを貼り合わせたものです。 ペアガラスとは、構造が異なります。 具体的には、スペーサーと吸湿材の代わりに合成樹脂などを2枚のガラスで挟んでいます。
合わせガラスには隙間がありません。 主な特徴は、衝突したものが貫通しにくいこととガラスが割れても破片が周囲に飛び散りにくいことです。 したがって、泥棒が衝撃を加えても簡単には割れません。
時間がかかるため、窓からの侵入を諦める可能性がありますよ。 以上の特徴から、合わせガラスは防犯性能に優れるガラスと考えられています。
合わせ複層ガラス
ペアガラスに合わせガラスを用いたものです。 ペアガラスは、ガラスとガラスの間に空間を設けたガラスでしたよね。 合わせ複層ガラスの基本的な構造は次の通りです。
【構造】 室外:ガラス+スペーサー・吸湿材+合わせガラス:室内
ペアガラスであれば、2枚のガラスのうち1枚を合わせガラスにします。 主な特徴は、合わせガラスの良い点とペアガラスの良い点を併せもつことです。
つまり、耐貫通性能、飛散防止性能、断熱性能に優れるガラスといえます。 したがって、防犯性能だけでなく断熱性能も高めたいときに適しています。
ペアガラスの防犯性能を高める方法
一般的なペアガラスは、防犯目的での使用に適していません。 どのように防犯性能を高めればよいのでしょうか。
合わせガラスに変更する
一般的なペアガラスはそれぞれのガラスの強度が低いため、2枚のガラスを使用していても防犯性能はそれほど高くありません。 ハンマーなどで叩くと簡単に割れてしまいます。
2枚のガラスのうち、どちらかを合わせガラスに変更すると防犯性能を高められます。 単体でも十分な防犯性能を有しているためです。 ガラスの構成は、室内側を合わせガラスにすることが一般的です。
期待できる防犯性能は合わせガラスの中間膜、期待できる断熱性能はペアガラスの中間層の厚みで異なります。 同じ合わせ複層ガラスであっても性能は異なるため、詳細を確かめておくことが大切です。
防犯フィルムを貼る
既存のペアガラスの防犯性能を高めたい場合は、防犯フィルムを貼ることも検討できます。 防犯フィルムは、ガラスの強度を高められるフィルムです。
防犯フィルムを貼ると、窓が割れにくいため力が必要で、割ろうとすると時間がかかります。 したがって、泥棒などが窓からの侵入を諦める可能性があります。
ただし、すべての防犯フィルムが同じ性能を有しているわけではありません。 信頼性を重視したい場合は、防犯性能の高い建築部品のみに使用が認められているCPマークの認定を受けた製品がおすすめです(DIYで施工した場合はCPマークを取得できません)。
一定の基準をクリアしているため安心して使用できますよ。
ペアガラスに防犯フィルムを貼るときの注意点
防犯フィルムを利用すると、ペアガラスの防犯性能を高められる可能性があります。 ここからは、防犯フィルムを貼るときに注意したいポイントを解説します。
注意点①窓の全面に貼る
防犯フィルムを貼るのであれば、クレセント錠の周囲だけでよいと考えていませんか? コストを考えると、貼る範囲をできるだけ小さくしたいですよね。
しかし、窓の防犯性能を考えるとおすすめできません。 貼っていない箇所を狙われる恐れがあるためです。 窓全体を割られて侵入を許してしまったり、貼っている部分ごと割られて侵入を許してしまったりすることが考えられます。
泥棒を遠ざけたい場合は、防犯フィルムを窓の全面に貼ることが大切です。 この方法であれば、簡単に割れる箇所がなくなります。 窓の全面に貼ると、泥棒から避けられる建物になるのです。
注意点②耐用年数を意識する
製品の耐用年数も意識したいポイントとしてあげられます。 ここでいう耐用年数は、使用に耐えられる期間の目安です。 この期間を超えると、設計通りの性能を発揮できなくなる恐れがあります。
例えば、衝撃に耐えられなくなるなどが考えられます。 一般的な耐用年数の目安は10年程度です。 購入したものを永遠に使い続けられるわけではありません。
一定期間を経過したものは、原則として貼り替えが必要です。 お手入れを怠らないことも、窓の防犯性能を高めるコツといえます。
ペアガラスの防犯性を高める合わせガラスとは
ペアガラスの防犯性能は、合わせガラスを使用することでも高められます。 前述の通り、このガラスは、2枚のガラスの間に中間膜を挟んだものです。
具体的に、どのような構造をしているのでしょうか。
合わせガラスの構造
基本的な構造は以下の通りです。
【基本的な構造】 ガラス+中間膜+ガラス
中間膜をガラスとガラスで挟んで圧着している点がポイントです。 2枚のガラスの間に隙間はありません。この点が、ペアガラスとの大きな違いです。
ただし、両者の見た目はとても似ています。専門的な知識を有する方が、近くで見たときに判別できる程度です。
合わせガラスの防犯性能が高い理由
一般的な板ガラスに比べて、合わせガラスは防犯性能が高いと考えられています。 主な理由は以下の通りです。
理由①割るまでに時間がかかるから
ガラスの間に中間膜を挟んで、耐貫通性能を高めています。 ハンマーなどで叩いても簡単には割れません。 ガラスを割るまでに時間がかかると言い換えることもできます。
過去に行われた調査によると、泥棒が侵入を諦める時間は以下の通りです。
侵入を諦める時間 | 割合 |
2分以内 | 17.1% |
2分を超え5分以内 | 51.4% |
5分を超え10分以内 | 22.9% |
10分以上 | 8.6% |
5分以上耐えると、約7割の泥棒が侵入を諦めます。 以上のデータなどに基づき、防犯性能が高いと考えられているのです。
理由②中間膜で対策できるから
想定するリスクに合わせて、中間膜を選択できる点もポイントです。 厚みを増すと、耐貫通性能や飛散防止性能などは原則として高まります。
住宅に使用する場合は厚みを60mil(ミル)にする、店舗に使用する場合は厚みを90milにするなどが考えられます。
1milは1,000分の1インチ、つまり0.0254mmです。 60milは1.524mm、90milは2.286mmに相当します。
これらから、非常に薄い膜を使用していることがわかります。
防犯対策をするなら防犯フィルム?合わせガラス?
ペアガラスの防犯性能を高めたい場合は、防犯フィルムまたは合わせガラスの利用を検討できます。 両者の特徴は異なるため、一概にどちらが優れているとはいえません。
比較したいポイントは次の通りです。
比較ポイント | 防犯フィルム | 合わせガラス |
費用 | 安価 | 高価 |
耐用年数 | 10年程度 | 20年程度 |
維持費 | 貼り替えが必要 | 原則として不要 |
防犯フィルムは、施工する方の技量により設計通りの性能を発揮できないことがあります。 イニシャルコストは、合わせガラスのほうが割高です。
ただし、維持費がかからないため、長期的に考えると必ずしも割高とはいえません。 両者の特徴を踏まえたうえで、いずれかを選択してみてはいかがでしょうか。
防犯性能の高いガラスやフィルムを選ぶ方法
防犯性能を高めたいときは、製品選びにも注意が必要です。 同じジャンルの製品であっても、具体的な性能は異なります。 一定の性能を備えている製品を選びたい場合はCPマークに注目しましょう!
CPマークは、平成16年に官民合同会議で制定されたマークです。 一定の基準を満たし、防犯建物部品目録に登録された製品のみ使用できます。
具体的には、所定の試験で、5分以上、侵入を許さないことを求められます。 したがって、CPマークを参考にすると、信頼性の高い製品を見つけやすくなります。
ペアガラスは防犯性能が低い!別の対策が必要
ここでは、ペアガラスの防犯性能について解説しました。 ペアガラスは、2枚のガラスの間に空気層をもたせたガラスです。
一般的な板ガラスを使用しているため、防犯性能は残念ながら高くありません。 簡単に破られてしまう恐れがあるため、防犯を目的に使用する場合は別の対策が必要です。
具体的には、防犯フィルムや合わせガラスの活用が考えられます。 両者は、イニシャルコスト、維持費、耐用年数、性能などに違いがあります。
それぞれの特徴を踏まえて、目的に合っているものを選ぶことが大切ですよ。 選択に悩む場合は、コダマガラスまでお気軽にご相談くださいね。